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「セリザワ探偵事務所で、ある女性と知り合ったんです。
その人は言ってました。
『過去と他人は変えられない。未来と自分は変えられる』って。
はじめはよくわからなかったけど、だんだんそれがわかって。
だから…
これから、未来を、作っていきましょう…2人で」
翔太は少し目を見開いて、それから柔らかく微笑んだ。
「ああ…
ああ、杏樹」
それから翔太は、優しく杏樹を抱きしめた。
ピリリリリ…
杏樹の携帯が鳴る。
「…!」
見ると、着信は真広からだった。
「翔太さん、真広から…」
翔太も少し目を見開く。
「もしもし」
杏樹が慌てて出ると、真広ののんびりした声が聞こえた。
『あー杏樹、電話ごめん。ちょっと忙しくて』
「いや…え、大丈夫?
あの…あのね、私、真広に言わなきゃならないことが」
『ああ、俺も』
「…何?」
『…杏樹からどうぞ』
電話の向こうの真広はなんだか楽しそうで、杏樹は不思議に思いながら続けた。
「あの…翔太さんと…」
『ん』
「あの、会え…て、それで…
…2人でもう一度…やり直すことになったの…」
一瞬の沈黙。
『そうか。…よかったな』
「…うん」
ホッと息を吐くように、真広が心から嬉しそうに言う。
『…よかった』
「…ありがとう。
それに、…たくさん、ごめんなさい。
真広のおかげで私」
『ああ、いい、いい。
杏樹が幸せなら、俺はそれが一番嬉しい…』
杏樹の目が潤み、翔太が優しく後ろから抱きしめる。
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