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仕事が終わって、翔太の車にまだ運んでいなかった最後の少ない荷物を載せると、杏樹と翔太はあの家に向かう。
明日にはマンションの鍵を返すのだ。
今夜から、また始まる2人暮らし。
杏樹は何となく緊張する。
長い山道を車が走る。
もう真っ暗な外は、空気が澄んで星がキレイだ。
数少ない荷物を下ろし、2人で話しながら夕食を作り、食べ、お風呂に入って、着替えた。
ーーな…なんだか…
翔太は先にもう上がっている。
脱衣所で、歯磨きもして、髪までもう乾かしてしまった杏樹は心臓がうるさくて、困った。
翔太とやっと愛が通じあって10日。
抱きしめ合うことはあっても、あれから2人はまだキスさえしてないのだ。
ーー変に…緊張してしまう…
やっぱり…今夜からは…ベッドに…
一緒に…寝る…?んだよね…
夫婦だし…
あっ…当たり前なんだけど…
恥ずかしい…
粘るだけ粘ってーー鏡とにらめっこする。
…うう…どうしよう…
いや、もう、なるようにしか…
トントン!
「ひゃっ…」
不意打ちのノックの音に、変な声が出た。
『杏樹?
大丈夫?』
「はっ…はい…!」
声が裏返ってますます恥ずかしかった。
杏樹は慌てて出た。
ドアの向こう、翔太が柔らかく微笑む。
「…」
杏樹は真っ赤になる。
ただでさえカッコいい翔太。
今まで微笑んでいるところなんか見たことさえなかったのに、ここ最近は微笑みの大安売りで、それだけで杏樹は、ドギマギしてしまう。
「のぼせてない?」
「…はい…」
翔太は杏樹の手を取った。
「おいで。
もう、寝よう」
「…は…い…」
手を引かれて、寝室に向かう。
明かりはもう落とされていて、何個かの間接照明ーー雰囲気が良くてドキドキが止まらなかった。
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