動き出した事態

1/1
前へ
/36ページ
次へ

動き出した事態

薄暗い洞窟の奥に、諫早と志保、島原の両親が拉致されていた。 「降魔さんがやらかしたんじゃないでしょうか。村の人達が勢ぞろいしているようです」 村人達は誰もが鉛のような眼差しで、諫早達を見つめている。 誰もが意味不明な文言を唱えているようだった。 「何でしょう。何がしたいのか」 「お義父さん達は?」 「我々はここだ。役場も現地人だ。つまり、我々の住む村そのものが、敵だったということになる。先頭にいるのは村長だ。脇には親戚もいる」 「村長さん。村長さんですよね?我々を解放してください。島原管理官の曽祖父殺害に加担したといっているようなものですよ」 「需脱(じゅだつ)は荒縄でくくり罪を洗い流した。おお、御前様じゃ。御前様お導きくだされ」 「聞いているようで全く聞いていませんね。御前様とは?あのヒッピー風の男ですか?」 薄汚れた神父は、志保を指差し言った。 「サンタマリヤ」 「はい?」 次いで島原の両親を指して言った。 「ナザレのヨゼフ。聖母マリヤ様。聖餐をもってさんと様に幸いを。デウスは坂の上で待つ」 「何を言っているんでしょう。モノクルを外そうにも彼等はこちらを見ているようで見ていません。これでは邪眼が使えませんね」 「さんと様はパライソに至る。聖餐を」 志保が悲鳴を上げ、次いで諫早も上げた。 村人達は、その体を頭から切り離し、巨大な蛞蝓となって這い出したのだった。 「ひい!蛞蝓ですか?!蛞蝓は駄目です!生理的に受け付けません!」 「ぎゃあああ!気持ち悪い!諫早さん落ち着いて!三竦みは迷信よ!蛞蝓を食べる蛇もいるんだから!」 「ひいいい!駄目なものは駄目です!こっちを見ていません!邪眼が使えません!いやあああああ!降魔さん!降魔さん!」 蛞蝓の如き村人達が、諫早に迫りつつあった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加