一方的な斬獲

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「塩っぱいな雪次!村長に場長!おい、無茶苦茶じゃないか?!」 「無事だったら重畳黙って見てろおっさん。島原、御前様に放水は効かないぞ。あいつは密航者か遭難者だ。流れ着いたもんで訳も解らず崇められた。ヒルコに魅入られたただの一般人だ。ああへロイン漬けにされてるな。逆にあれだな。イカれてるから村人鏖殺の犯人にしちまおう。島原、わっぱかけろ」 「流石に無法だろう」 「曾祖父さんに塩振ったのは誰だと思ってんだ!共同体で唯一塩が効かないのが何よりの証拠だ!早く捕まえろ!」 御前様は、どこも見ていない。狂気のような世界で、望まれるままに振る舞った先に哀れな人形のようになっていた。 御前様が、上を指差して言った。 「さんと様が救い給いぬ」 天井が砕け、黒い巨大な肉の塊が、御前様を飲み込んだ。 「うお!危ねえ!ヒルコってのは不具神だ。人の形を作れない肉の塊だ。人間と融合して蛞蝓人間になってた。人の肉体をもってしてもまだ足りない。哀れな神格だな。ちょっと行ってくる。戦部さん!」 ガルーダの面が空を舞い、肉を切り裂いていく。鞭毛のような肉がビタビタとのたうち、やがて、薄汚れた神父諸共、肉を両断した。 こうして、身もふたもない、何の余韻も残さない斬獲が終了したのだった。
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