7人が本棚に入れています
本棚に追加
天草志保さん、こんな俺でも、結婚してもらえるだろうか?」
預言者と呼ばれた男は、一人の女の答えを待った。
志保は、にっこり笑って言った。
「よろしくお願いします。雪次君」
「よし。帰るぞ。おっさん共をマンションに放り込んだら帰ろう」
「志保さん。おめでとうございます。刑事の妻として、若干の蘊蓄があります。先達はお任せ下さい」
「まあ何だな。嫁のリクエストに応えるのが夫の役目だ。安心して頼れ。頼られてやらないこともない。さしあたって、なんか一個奇跡起こしてみろ。きっと受けるぞ」
「もういい!黙っていろお前は!」
島原の怒号が、払暁の滅んだ村にこだました。
そして、勘解由小路がオフィスでだらけていると、島原が足音高くやって来て言った。
「おう。どうした島原。三鷹さんと浮気したけりゃ言っとくぞ」
「つまらん冗談はやめろ!処分が決まった。村人鏖殺の事件の責任を取って、捜査一課付きを離れた。次いで、怪奇課に配属されることになった。辞令が出ればお前の上司になる。今後はあんな無茶苦茶な仕事は認めん」
「先頭きって訳の解らん雄叫び叫んでいたのはお前だろう。それで、式はいつになった?出てやらんこともない」
「式は半年後に決まった。品川のホテルだ」
「半年後か?けっ、とっとと決めりゃあいいのに。俺は一ヶ月後だった」
「普通に出席者募るならそうなるんだ!非常識め」
「ふーん。余興やれよ。奇跡見せろキリスト二世。3日後に帰ってくるとかやれよ」
「ああ。それならな。見てろ」
そう言って、島原は集中した。そして、空が震撼した。
オフィスの外の植木に、落雷が光り、植木をなぎ倒していた。
「最近出来るようになった。パンを分けるのはまだ無理だが、いずれは色々出来るだろう」
「そうか。怪奇課へようこそ」
また一人、異能の者が怪奇課の扉を叩いたのだった。
了
最初のコメントを投稿しよう!