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「おっちゃん、何もしないでボーッとしてたけど、どうやら何かを待っているみたいだな」
「……ああ、そうだ」
「やっぱり! いやー、久しぶりに“待ちぼうけ”に会えたぜ! 昔は単純に人と待ち合わせだったり、雨が止むのを待ったり、獲物が罠にかかるのを待ったりと結構オイラの出番があったんだけど、近頃の人間はすまふぉほんとかいうのを手に入れたせいで暇なやつがめっきりいなくなっちまってなぁ」
「すまふぉ……ああ、最新の携帯電話の名前か」
「そこへいくとおっちゃんは何もせず時間をもて余してるみてぇで現代人にしては珍しいな」
「ふん、俺は現代から取り残された過去の人間だからな。ここにはすまふぉとやらはもちろん、ゲームもパソコンも無いし、テレビを観れるのも月に数回だ。娯楽が雑誌や新聞だけでは退屈で気が狂いそうになるってもんだ」
「じゃあよじゃあよ、オイラと遊ぼーぜ。オイラこう見えて遊びの達人だからな!」
俺と遊ぶだと? この俺が、こんなガキと? 冗談だろ。
そもそもこうして人と普通に会話すること自体久しぶりだってのによ。ああ、こいつは人じゃないか。
ともかく、わざわざこんなところまで来てくれたんだ。退屈しのぎに利用してやるとするか。
「ああいいぞ。お前の気が済むまでつき合ってやる」
「ひゃっほー! やったぜ! おっちゃんが嫌と言うまで遊んでやるぜ!」
今更拒否したり抵抗したって無駄か。俺は全てを受け入れなければならないんだからな。
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