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彼女はいつも、不思議なモノと一緒にいる。寄り添うように隣で立っている。何かを待っているのだろうか。今宵も彼女たちは私の前に現れる。
私は幼馴染を待っていた。買い物に行きたいらしい。わざわざ私を誘うのは何故なんだろう。不思議に思いながら幼馴染を待っていた。ふと、隣から何かの視線を感じてそちらを見る。すると、ウサギのような形のモノと目があった。現実にいるウサギではなく、絵本などに登場するデフォルメされたウサギの体に見える。しかし、その輪郭はぼやけていた。真っ赤な丸い目でこちらをじっと見つめている。何か言いたいのだろうか。私にはわからなかった。
「あなたも待ちぼうけ?」
彼女が問いかける。いつの間にか私の背後に立っていた。私が振り替えると、すたすたとウサギの隣へと移動した。
「この子はずっと待ってるの。何年も何十年も。」
ウサギの目が悲しげに光る。それを拭い去るように彼女の腕にぎゅっとしがみついた。
「待ってるのに、誰も来ないなんてさみしいよね。この子もとってもさみしいの。約束したのに来てくれなかったから。」
私は幼馴染のことを考えた。まさか、来ないなんてことはないだろう。イタズラで靴を隠したり、言葉遣いが悪かったりするが、約束を破るような人間ではない。私の考えを見透かしたように彼女はニヤリとこちらを見た。
「あなたは来るって信じてるんだね。この子も信じてるの。死んでからもずっと。」
彼女の声が低くなる。嫌な汗が背中を伝う。彼女から目線を外すとウサギと目があった。ぼやけていたはずの輪郭がくっきりと見える。その目は真っ赤に腫れていた。泣いた後のように。私の心に少し不安が過る。自分はそうでないと思いたい。
「誰だってそうだよね?」
その言葉はいつもとは少し違うさみしさを帯びていた。
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