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「この子はね、友達と約束していたの。一緒に誕生日のプレゼントを探しに行こうって。12時に待ち合わせてたの。とっても楽しみで、30分ぐらい早くについちゃったこの子はしばらくボーッとしていたの。その間も何を買おうか、あそこのお店のクレープ食べたいなとか、考えてた。そうしているうちに、12時を過ぎていることに気づいたの。」
ウサギの輪郭がさっきよりもはっきりとわかるようになった。このままウサギをはっきり捉えるのは危険な気がする。彼女の話を聞くほどそれは鮮明になるのだと気づいたが、私は彼女から逃げ出そうとはしない。逃げられないと知っているから。
「少し遅れてるのかなってこの子は思った。でもそれから何時間待っても来る気配がない。携帯電話なんて持ってなかったから連絡もとれなくてこの子はそのまま待つしかなかったの。」
嫌な予感がする。ここにいてはいけないような気持ちになり、私はそわそわとしてしまった。彼女は構わず続ける。
「・・・待ってたらね、この子死んじゃったの。どうしてか、わかる?」
ウサギの体がはっきりと見える。真ん中、ちょうどお腹の辺りだろうか、赤く滲んでいるのがわかった。自分のお腹の辺りがもぞもぞと気持ち悪い。とても嫌な感じだ。私が苦虫を噛み潰したような顔をしていると、彼女の顔から表情が消えた。何故そんな顔で私を見るの。私は何もしていないのに。無言のまましばらく経った。気がつけば、ウサギの輪郭がぼやけた状態に戻っている。どういうことなのだろうか、考えていると不意に肩を叩かれた。私は思わず飛び上がる。恐る恐る振り返ると、そこには息を切らして汗だくの幼馴染がいた。
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