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重力に従って葵くんの唾液を流し込まれたからか、呑み込みきれなかったどちらの物とも分からない唾液が僕の口の端から零れているのに今更ながらに気付いて、ペロリと舐め取った。
「葵くんのことに決まってるよ」
「でもキスに集中してなかったでしょ。……ちゃんと目の前にいる俺だけを見てて」
僕、すごく愛されてるな……。
僕が頭の中で葵くんのことを考えることにすら嫉妬する姿に愛おしさが込み上げる。
「うん、分かった。分かったからもう一回、ちょうだい?」
オネダリすると葵くんはまたキスをしてくれた。
葵くんは目も閉じず、じーっと僕の目を覗き込んでいたから、僕も自然と葵くんを見詰めながらキスの味に酔い痴れる。
こうしてキスをするのもつい四ヶ月前まで知らなかった。それなのにいつの間にか順応し、自分の物にしてしまったのは葵くんに何度も何度も手ほどきを受けたからだ。
付き合い始めた頃、つまり六ヶ月前の僕はこんなに美しい人と手を繋ぐことすら考えてもいなかった。
それが今では濃厚なキスから男根の味まで覚えてしまったとは……人生って目まぐるしい。
「かえで、かえで……傍にいて」
葵くんがキスの合間にそう囁く。
葵くんは何でも持っていて完璧に見えるのに、すごく心配性で寂しがり屋さんだ。
その繊細さが僕をより惹きつけて止まない。
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