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「シュレッダー三ヶ月も買ってくれって言ってんのに、まだ使えるの一点張りだし、出張費もケチるし、接待費用は半額しか出ないし。ハーレム課維持するために別のトコに金使ってんだって思うじゃん。てか、言っちゃったじゃん、お前に」
「まあ、確かに色々不満はありますけど……それに、まさか江川課長が個室にいて全部聞いてるとはね……」
その時のことを思い出したのか、牧瀬が吹き出す様に笑う。その様子に、佳史は持っていたファイルを牧瀬に投げつけた。
「いった! そんな怒んないでくださいよ」
「お前、あん時も笑っただろ。覚えてるぞ、俺は」
そして忘れないからな、と佳史は次のファイルに手を伸ばした。それを見ていた牧瀬も棚に向き直る。
「課長の記憶に残れるなんて、嬉しいです」
「はあ? 前向きに解釈するな」
「だって忘れないんですよね」
「じゃあ忘れる。てか、もう忘れた」
「健忘症……」
「じじい扱いするな」
佳史はファイルを開きながら、隣に立つ牧瀬の尻に蹴りを入れる。びくともしなかったが、いつも冷静な牧瀬が、わあ、と驚いたので、佳史の気持ちは少しすっきりした。
「てか、全然目当ての資料出てこないんだけど! つーか、十年前の顧客データなんて今更何に使うわけ?」
「今は切れたけど、以前は繋がっていた顧客に再度営業かけるらしいですよ、一課が」
「一課かよ。原田が自分で探せばいいのに」
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