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原田は要はケンカ友達だ。その名前を聞くとやっぱり腹立たしい。
「一課は忙しいですから」
「ソーデスネ」
一課は営業の花形だ。スーパーやコンビニに並ぶお菓子を担当していて、プライベートブランドの契約なんかも結んでくる。以前はこれを一課と二課でやっていたのだが、二課は今、五年ほど前に参入したばかりの清涼飲料水を担当していて、三課は主に製菓材料を担当、あとは一課で廻しきれない仕事も仕方なく担当している。つまりそのくらい仕事に余裕があると見られているが実際は目が回る忙しさだ。
「つーか、顧客って菓子屋とかだろ? 潰れてんじゃねえの?」
「いえ、以前は菓子屋で、今はコンビニなんてところも珍しくないですし」
牧瀬の言葉に、ふーん、と答えて佳史は棚を見上げた。一番上のファイルに『営三』の文字が見える。佳史が精一杯背伸びして手を伸ばすが届かなかった。
「おい、牧瀬、あれ」
佳史は仕方なく隣に言い、ファイルを見上げる。それに気づいた牧瀬が、ああ、と言って床に膝をついた。
「おれ、踏み台になるんで、取ってください」
「……いや、素直にお前が手伸ばせば届くんじゃね?」
「いやいや、これは課長の仕事ですから、課長が取らないと」
「いや、訳わかんないんだけど」
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