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 佳史の前で四つん這いになる牧瀬に首を傾げる。すると牧瀬が答えた。 「単純に課長に触れたいだけです」 「………変態?」  牧瀬の言葉が理解できなくて、充分時間を掛けてから聞くと、どうでしょう、と乾いた笑いが響いた。 「押し倒されるよりいいと思って下さい」  顔を上げた牧瀬が笑う。あまりに情けないそれを見て、佳史がため息を吐いた。 「残念なイケメンってお前のことなんだな」  そう言いながら佳史は靴を脱いで牧瀬の背中に上った。それから棚に手を伸ばしてファイルを引き抜く。 「これで満足か、牧瀬」  よいしょ、と牧瀬から降りて、その顔を見やると、満足そうな笑顔で頷いた。 「課長軽くてびっくりしました。ついでにもっと足蹴にしてもよかったんですよ」 「……俺にSの趣味はないんだよ。ドM」 「あー、やっぱおれMなんですかね」 「上司に足蹴にされたいって言うような奴は超ド級のMだろうが! ……あ、やっぱりこの資料だ。牧瀬、これデータにして一課に廻しとけ」  佳史は手にしていたファイルを牧瀬に手渡して資料室のドアを開けた。 「あ、分かりました! 課長はどちらに?」  スーツの埃を払ってから、ファイルを受け取った牧瀬は佳史の後を追いながら言う。 「んー、とりあえず一課で原田に文句言ってから昼飯かな」     
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