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「だっ……だっ……だ、き、まくら、にするには、ちょっと不向きだぞ? 中年は腹出てるからいい枕になると思ったら大間違いだ。俺は、それなりに鍛えてて、結構硬いんだ」 「へえ……でもサイズ的には腕の中にすっぽり入りそうだし今度試させてください。きっといつもはそうやって後ろに流してる髪もベッドでは乱れるんでしょうね。肌もさらさらなんだろうな……って考えたらセックスしたくなりそうですけど」 「セッ……ス……すいか、からす、すずめ、めだか、かば、ばーかはお前! 俺は寝る!」  疲れたからな、と言って目を瞑ると、静かに隣から、おやすみなさい、と聞こえた。もうこれ以上話はしないのだろう。ほっとして佳史は小さく息を吐いた。牧瀬の気持ちを受け入れる自信などなかったし、でも今の関係が気に入っているから断ることもできなかった。なあなあにしたいという佳史の気持ちは牧瀬が汲み取ったようで、その時はひどく安心した。  けれどすぐに、その言葉は冗談ではなかったのだと分かることになる。 「おーい、村井。報告書あがってないぞー。山木、今日のルートに一件足してくれるか?」  オフィスの自分の席でパソコン画面を睨む佳史は、そう声を張る。遠くから、了解しました、と声が届き、再び自分はパソコンのキーボードを叩く。 「課長、新規の顧客リストです。今日中に目を通して上に上げて欲しいそうです」     
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