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「あー? どうせジジイどもは暇なくせに、なんでもかんでもすぐ上げろって、ふざけんなよー。お前もきっちり一日で上げてんじゃねーよ。深夜残業なんかするなよ」
「え、知ってたんですか……すみません……」
佳史のきつい言葉に部下がたじろぐ。そんな彼を鋭く見上げて佳史は言葉を返した。
「お前、午前中ルート営業な。十一時にこの店行って注文取って来い」
「十一時、ですか……? 今まだ九時過ぎ……」
「はあ? 頭使えよ。隣にネカフェあんだろうが。自腹で時間潰せ」
いいな、と佳史が言い、その言葉の意味を理解した部下が、ありがとうございます、と頭を下げて佳史の元を離れる。それからすぐに、遠くから呼ばれ、佳史は不機嫌に顔を上げた。
「3番にお電話です」
「はいよー……はい、お電話替わりました、青野です。はい、お世話になっております」
こうやって佳史に掛かってくる電話は、商談か、直接注文の電話だ。大抵は後者、しかも、できれば今日納品してほしいんだけど、というワガママな電話だ。佳史は、内心はキレているが、努めて明るくそれを了承する。電話を置いた佳史は、くっそ、と舌打ちをした。
三課は暇課、なんて社内では言われるが、そんなのはでたらめだ。佳史の毎日はこんな感じで忙しい。どうやって時間を調整して行こうかと時計を睨んでいるとふいに声が掛かった。
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