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「その納品、おれ行きましょうか? 今日ちょうど近く通るし、在庫の確認に倉庫行くつもりでしたし」  イライラが頂点に達していた佳史にそう声を掛けたのは牧瀬だった。佳史はそれに、素直に頷いた。 「助かる! 俺はまだ動けそうにないし。あー、あそこのオーナーに、在庫管理くらいしろよクソッタレって伝えておいてな。毎度俺を呼びつけるんだよ」  あのババア、と佳史が注文品のメモを牧瀬に手渡した。 「それは嫌な予感しかしないですね。牽制してきます」 「そうだな、少し牽制……牽制?」  そう言って佳史は牧瀬を見上げる。すると牧瀬は大きく頷いた。 「その方、わざと在庫を切らして課長に届けさせてるんだと思います。つまり、課長に好意がある。だからライバルは牽制します」 「………ばか?」 「真面目です」  はっきりまっすぐ言う牧瀬に佳史は大きなため息を吐く。そこへ、机の上の電話が鳴った。それを取ると、相手は一課の課長で同期の原田だった。原田は佳史にとって何かと比べられてきたため、ライバルというより天敵だ。その名前を見ただけでなんだか腹が立つ。 「……切る」 『待て待て。仕事! 悪いんだけど今日中に商品リストくれない? できれば画像付きで、なおかつ何個かサンプルも……』 「そんなの倉庫に言えよ」     
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