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それから数日後、この日は牧瀬と外回りに出かけていた。一緒に廻るのはとても珍しいが、今日は牧瀬の仕事量を増やそうと、自分の営業先に牧瀬を紹介して廻っていた。牧瀬になら自分の得意先を譲ってもいいと思っていたし、デスクワークも最近はかなり増えてしまったので丁度よかったのだ。
「なあ、牧瀬、今日廻るのあと何件だっけ?」
「あと四件ですね。でも、残りは在庫チェックだけでしたよね」
しかも全部近場ですよ、と言う牧瀬に、佳史は、でもなあ、とため息を吐いた。
ここまで昼を除いて一日歩いて電車に乗ってまた歩いての繰り返しだ。外回りは一気に済ませる派の佳史だが、今日は少し詰めすぎたらしい。午後四時にもなると、足も棒のようになっていた。
「うーん、だめだ。ちょっと休憩。そこでコーヒー飲んで行こう」
駅前にあるファストフード店を指差して佳史が言う。牧瀬は、喜んで、と笑って佳史の後を付いて来た。
「牧瀬は体力あるな」
コーヒーを買って、適当な席に座ると、佳史は深く息を吐いてそう言った。
「まだ二十五ですから」
「あー、ですよねー。俺と十歳も違うんだもんな」
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