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 次に佳史が目を覚ましたのは鳴り続けるインターホンの音を聞いてだった。何事かと飛び起きて玄関へと急ぐ。ドアを開けると、そこに牧瀬が立っていた。 「んだよ、牧瀬か」  慌てて損した、とドアから離れると牧瀬の顔が不満そうに表情を変えた。 「なんですか、それ。課長が家にいるって言うから来たのに」  牧瀬はそう言うと玄関に入り、内側から鍵を掛けた。それから佳史に腕を伸ばして、ぎゅっと抱きしめる。そうされてようやく佳史の目が覚める。 「ちょ、牧瀬? なんだよ、突然。つーか、お前酒くさい」 「呑まなきゃあんな子と食事なんかできません。課長のために付き合ってきたんだから、もっと褒めてください」 「俺のため?」 「そうです。課長の顔を立てたんじゃないですか。おれは行きたくなかったんです」  牧瀬は更にぎゅっと佳史の体を抱きしめて首筋に顔を寄せる。思い切り息を吸い込んでからゆっくりと吐き出す。 「ようやく落ち着いた……」 「……お疲れ」     
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