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佳史が言えずにいると、牧瀬の脚が、するりと佳史の脚の間に入ってきた。当然欲望を持ち始めた中心も感じ取られてしまう。佳史はそれが嫌で逃げ出そうとするが、廊下の壁に押さえつけられ、逃げ道を絶たれてしまった。
「課長のこういうところ、すごく可愛い。ホントにおれより十歳も年上なんですか? おれ、こんな可愛い人見たことないです……きっともう出会えない」
ぐっと牧瀬の腿が佳史の欲望に押し付けられる。それだけで佳史は、息が乱れてしまいそうだった。
「牧瀬、ホントに……」
このままじゃまずい。それを訴えようにもキスを続けられ、言葉が出ない。
「おれも限界です。ちゃんと、抱きたい」
牧瀬はひょいと佳史の体を抱き上げるとベッドへと降ろした。けれどいつかのような乱暴さはなく、本当に優しく降ろされ、なんだか逆に恥ずかしくなる。
「そういえば課長、まだスーツなんですね」
自分に覆いかぶさった牧瀬がふと指を止めて言う。そういえば、帰ってきてすぐ眠ってしまったので着替えもしていなかった。
「もしかして、おれのこと、待っててくれたんですか?」
「……自意識過剰だな」
牧瀬のことを待っていたわけではない。けれど牧瀬のことを考えていたのは本当で、なんだか見透かされたようで気まずい。ふい、と視線を逸らした佳史に、牧瀬が少しだけ微笑んだ。
「素直じゃない課長も好きですよ」
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