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 私の名はシロである。そこの君、犬を思い浮かべただろう。違う。私は犬ではない。何故白い犬にはシロと名付けるのに、茶色い犬にはチャと名付けないのだろうか。私には不本意でならない。  私は“白”だ。“白”そのものだ。よくある擬人化だ。せっかく自我を持ったということで、日頃の不満などを愚痴らせてもらおう。  私は主役を張れない自分があまり好きではない。絵の具では他の色を補助する役割しかできないし、色鉛筆なんてもはや白色が存在している意味がわからない。皆から好かれる空だって、青のイメージだ。雲が広がっている白色の空が好きだという人はあまりいない。国旗である日の丸にだって採用されているのに、私は赤の引き立て役だ。  しかし、そんな私にも主役を張れるものがある。結婚式のウエディングドレスだ。今では、多くの花嫁が純白のウエディングドレスを着てくれる。この時だけは私は胸を張って主役だと言い切ることができる。
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