押し売り

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カーテンの隙間から射し込む陽光で、准は目を覚ました。 朝……。 頭がズキズキと痛むけど、何とか身体を起こす。 なにか夢を見ていた気がするけど、思い出せない。 額を押さえながら周りを見回すと自宅のリビングにいた。フローリングの上で、着替えもせずに寝っ転がっていた。昨日は相当酔ってたんだな、と苦笑する。 水でも飲もうと立ち上がると、見慣れない存在が真横にいた。 「うわっ! だ、誰……!?」 目覚めの心臓に悪すぎるが、足元には横たわる一人の青年がいた。そこで走馬灯のように、昨夜の事を思い出す。彼は確か、昨日のストーカー君だ。加えて人ん家の目の前で酔い潰れて寝ていた、はた迷惑な青年だ。 あぁ……! 夢じゃなかった。この頭痛も何もかも、紛れもない現実。戸惑うが、冷静に昨夜の記憶を辿る。すごー……く眠かったことだけは覚えていた。 だからさっさと話を聴き出して追い出したかったのに。……彼が中々口を割らず先に寝たもんだから、限界になって一緒に寝てしまったんだ。 やばいな。 「どうしよ……っ」 この時点で楽しい休日は地獄と化した。 まだ寝起きのせいで頭が働かない。准はその場をウロウロしたあと、もう一度寝ている彼の顔を覗き込んだ。 おぉ。やっぱりタイプの顔。 いやいや、それは今どうでもいいだろ。落ち着け。 現実から目を逸らそうとしている自分を心の中で叱咤する。何だか恥ずかしい。 ……それにしても不思議だ。全く知らない青年なのに、初めて会った気がしない。 「ん……」 不思議な気持ちで眺めてる間に、青年は目を覚ました。そのタイミングは最悪だった。准は限界まで身を乗り出し、息が当たりそうなほど顔を近付けていたから。 「あの……何か近くないですか」 案の定、青年は変質者を見るような眼で准に言った。確実に良くない勘違いをされている。 「ふあぁ……准さん、俺が寝てる間にキスしようとしたんてすか? 恋愛スキル向上のため練習に付き合うのは構いませんけど、さすがに粘膜と粘膜が接触するやつは有料ですよ」 ウッ、気持ち悪い説明までついてきた。 「んなわけないだろ。何で会ったばっかの奴とキスしなきゃいけないんだ」 「でも、顔真っ赤ですよ」 嘘。思わず自分の顔が映りそうなものを探したが、背後で小さな笑い声が聞こえた。 「すいません、嘘です。准さんは清純な心をお持ちだから、そんなズルい真似はしないって分かってます」
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