押し売り

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常識から逸脱した、本当にやばい青年だ。しかし彼の勢いは留まるところを知らず、さらに熱く語りだした。 「だから俺は、貴方を全力でサポートしなきゃって思ったんです! 短い人生、やりたいことはやらきゃ大損じゃないですか!」 「家追い出されたわりに随分ポジティブだな……何でそんな張り切ってんだよ。俺を手伝って何かメリットでもあるの?」 「それが全くありません、むしろ……いや、小難しい話は置いといて。准さん、今気になってる男性はいらっしゃらないんですか?」 全然小難しい話じゃないし、彼は口を開けば恋愛の話ばっかりだ。 「いないわけじゃないけど……それより、何で俺が女に興味ないこと知ってんだ」 「なるほど。じゃあ俺がとっておきのデートの誘い方をお教えします! これでもう寂しい夜を過ごさずに済みますから!」 あれ、おかしいな。俺の声、聞こえづらいんだろうか。 底知れない不安を覚えつつ、准はわざと砂糖を多めにしたコーヒーを口に含む。久しぶりに味わう甘ったるい余韻がいつまでも残った。 そういえば、他人を家に入れたのはいつぶりだろう。従兄弟の創だって最近呼んでないのに。 非現実的な状況に、思わず苦笑いする。 頭では分かってるが、彼の常識の無さと自分の警戒心の無さを深く考える元気がない。 「准さん、大丈夫ですか? もしかしてまだ眠いとか」 「いや、眠くはないよ」 「そうですか……じゃ、きっとお疲れなんですね。俺がマッサージします! 頭もスッキリして一石二鳥ですよ」 「うん?」 困惑する准を置き去りに、涼は上機嫌で手足のマッサージを始めた。色々不可解だったが気持ちいいのも確かで、いつの間にか大人しく脚のマッサージを受けていた。 「准さん、こことかどうですか? 何かゾクゾクしません?」 「う……っ……ん……」 痛いけど、気持ちいい。 気持ちいいけど……なんだろ、この感じ。爪先まで痺れる絶妙なテクニックに、疲れが取れるというよりは変な気分になった。 「このまま、もっと気持ちいいところまで揉みほぐしちゃいましょうか」 太腿に触れていた手がさらに上に這い、内側をなぞっていく。 「……っ」 その手つきは今までにない触り方で、自然と息が荒くなった。やっぱり、何かおかしい。 「准さんは特別です。この穢れを知らない綺麗な身体に、人と繋がる喜びを教えて差し上げます」 あ、これ百パーセントマッサージの話じゃない。
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