押し売り

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昨夜は酔っていたから仕方ないとして、言っちゃ悪いが涼は元々頭のネジが緩い気がする。天然の一言では片付けるのは難しいと、内心ため息をついた。 途中、二人は小さな公園に立ち寄った。住宅街の中で唯一緑に包まれた憩いの場だ。 「本当に、何から何まですいませんでした。電話まで貸してくださりありがとうございます」 誰もいないブランコに座るやいなや、涼は深々と頭を下げた。 「別に、それはいいよ。財布見つかんない方が大ごとだからな」 准も隣のブランコに乗って軽く漕いだ。公園には自分達しかいなかったが、真っ昼間から大の大人がブランコを占領するべきじゃないと思う。だけどやりきれない気持ちに突き動かされ、准は頑張って漕いだ。 「あは、准さん楽しそうですね。ブランコ好きなんですか?」 「い、いや……。ごめん、空気読まなくて」 「いいじゃないですかー! 俺ブランコ好きですよ。中学生以来かなぁ」 涼は懐かしそうに笑うと、少し後ろに下がってブランコを漕ぎ始めた。だが、 「あっ、こんな事してる場合じゃなかった。早く准さんの恋人を捜さないと」 「それこそ後回しで良くないか!?」 この状況で、本当によく分かんない子だな……! 准は深刻に頭を抱えたが、涼は明るい口調で強く主張した。 「後回しにしてたら准さん、今年が終わっちゃいますよ。さぁ、気になってるという男性に会いに行きましょう」 「いやいや、冗談よせよ。大体今日はお互い休日だし……休みに会うような間柄じゃないんだ」 「でも、休みの日にわざわざ会いに来てくれたら嬉しくありませんっ?」 「そーだな。……相手によると思うけど」 准がめんどくさそうに言うと、涼は少しハッとして頷いた。 「あぁ……確かに、そうですね。無茶を言ってすいません。じゃ、俺は出直してきます。准さん、明日は出勤ですよね? 一緒に行きましょう!」 「はあああ!?」 安心したのも束の間、涼の言葉に准は驚愕した。 「何でそうなるんだよ! 大体お前も仕事あるだろ!」 「しばらく有休取りましたんで大丈夫です。これで心置きなく准さんの恋愛成就に精を出しますよ!」 本気なんだろうか。准は眩暈がした。段々と疲れてきていたけど……涼は太陽の光が眩しそうに目を細め、そして笑った。 「あの……准さんは幸せになれますよ。貴方を大事にしてくれる素敵な人を見つけて、絶対幸せになりましょうね」
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