あたりまえの朝

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10時になった。 (そろそろ出社しなければ・・・) 残りのコーヒーを飲み干して洗面所へ。 髭を剃り、冷たい水で頬を締める。 「シャッキリするでしょ?」 結婚した翌朝、 君に言われてからそうしてきた。 タオルで水分をよく拭き取る。 リビングへ戻り・・・・ また椅子に座る、何分も・・・ 頬がまた濡れ始めた。 「君はいないんだ・・・」 昨日の朝までは子供達がいて 気持ちが張りつめていたようだ。 ふいに悲しみが襲いかかる・・・。 毎朝、君は丁寧に保湿クリームを 塗ってくれて 「夜は何がいい?お魚?」 なんて聞いてくれて 「なんでもいいよ。  夕方駅で待ち合わせて  買い物しようか?」 そんな相談していると 「子供の前で“新婚さん“みたい」 子供達によく冷やかされた。 言葉のリズムまで鮮明に 思い出されて動けない。 「子供達がしっかりしようとしてるのに」 写真の君が呆れ顔・・・ 「でもどうにもこうにも・・・  ならないんだよぉ・・・」 あたりまえの朝が来ないことが 悲しくて悲しくて 悲しすぎて・・・ どうにもならないんだ・・・。             ー 了 ー
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