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運命の女神
鳥居の色は既に識別出来ない。辺りは暗く、虫の音さえ聞えない闇に飲まれている。
その中で、社付近だけがオレンジ色に光っている姿は、場所も在り神々しいモノに見えたのだ。
光に集う虫の如く、明りに惹かれ導かれる。
石段は伸びる。
オレンジの光の元へ、足元の見えない段は、不安定だ。躓きながら上へ、上へと急ぐ気持ちを押さえつける様に固い。
暖かな光では無い。
巨大な炎が社の横で火の粉を吹きながら燃えている。
高さは六メートルを超えた巨大な炎。
その熱気は、近寄るなと脳から身体に指令が来なくても危険だと分かる。
その炎の傍に、小さな少女が立っている。
寂しそうに炎を眺めていた少女は、石段を上がって現れた僕を見つけると、可愛らしい大きな目を潤ませながら笑う。
僕の頭は真っ白になる。
息が出来ない程の高揚感。
「これが運命か」
真っ白な服を着ていた。
意識はぼうっとし、温かい中で、ふわりと宙に舞う感覚を感じた。
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