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襲撃
夜闇を引き裂き、一条の矢が鶴見松之輔を襲った。
はっと身を引いてそれを躱し、
「南町奉行所、本所深川方与力、鶴見松之輔と知っての狼藉か!」
大喝したが、応えは無い。
滅多には無い非番の私的な外出で、一目で町方役人と分かるような身なりはしていない。十手も所持しておらず、供も連れてはいなかった。
それでも。どうやらこれは、それと知った上での襲撃であるらしい。
ならば――
先日捕らえられた、押し込み一味の残党だろうか。
本所深川方は、この地域の橋梁の管理や、頻発する水害時の出役などが重要な仕事の一つであり、鯨船と呼ばれる高速船を二隻所有している。
仲間に船頭がいて、巧みに川筋を使った犯行だったが、松之輔とその配下が最終的に追い詰め、捕縛に至り獄門台へと送った。しかし、一味を一網打尽にするには至らなかったのだ。
(五人……いや、六人か)
素早く勘定しながら松之輔は大刀を抜き放ち、続く二の矢を切って落とした。
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