3 長澤瑠璃

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3 長澤瑠璃

 臨床実習に入るのが5回生、だとすれば築島に会ったのはその少し前。私が21、2の頃になる。 「今日はスタジオ、別の子が使ってるから」  望月さんにそう言われ、私は機材と一緒に車に乗り込んだ。  望月さんがどういう人か、私は今もってよくわかっていない。歳は50近かったのだと思う。カメラマンが仕事だったのだと思うが、それすらはっきりしない。確かなのは、安倍川さんというカメラマンと共同でスタジオを持っていて、週末はそこで各々が連れてきたモデルと撮影をしていた。  ふらりと立ち寄ったバーで一杯奢ってもらったことをきっかけに、私も写真を撮ってもらうことがあった。スタジオへ行けば、撮影に加えてもらえたりご飯をご馳走になれたり、何かと気が紛れることが多かった。  その日は海辺までロケという名の散歩に行き、お昼を食べてスタジオに戻ってきた。中に入ろうとすると、暗幕がかかっているのが見えた。撮影がまだ続いているようだった。特殊な条件で撮影をしていることもあるので、無造作に踏み込むことも躊躇われた。まず様子をみに入った望月さんが、すぐに顔を出す。悪戯っぽく笑い、こちらを手招きした。 「ハリちゃんおいで、凄い美人がいる」  面白そうな誘いに一も二もなくスタジオに忍び込んだ。経験から邪魔にならずに覗ける場所はわかっている。光も影も持ち込まないように注意して、私はひっそりと機材の陰に身を潜めた。  そこに、美しい男がいた。  ライトの白の中に浮き出た裸体は、彫刻のような滑らかさだ。白皙の美貌とは、こういうことを言うのだと思うほど、透きとおった肌をしていた。カメラを構えているのは見たことのない男性で、それ以外にも何人もがカメラの後ろに立っていた。唯一顔見知りの安倍川さんは、カメラの男性に指導している。試行錯誤を繰り返しながら、撮影は続けられた。
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