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「なにこれ、お仕事?」
私の傍にしゃがみ込んだ望月さんの耳に、そっと囁く。
「違う、アマチュアの撮影会」
「モデルさんはプロ?」
「いや、違うと思うよ」
お金のない美人を拾ったと、安倍川さんが話していたらしい。だとすれば、私と同じ素人だ。健やかな背中を晒す彼の表情は、暗がりに沈んでここからはあまりよく見えない。
「彼、大臀筋のラインが理想的」
「あれ、ああいうのが好み?」
遠慮なく私の太腿に掌を置いて、望月さんは顔を寄せてきた。大した理由もなく何度かセックスした仲なので、好きにさせておく。
「うん、あんな身体になりたい」
「それは難しそうだ」
ショートパンツの裾から入り込もうとした指を制し、彼の手の甲をぱしりと叩いた。その音が思った以上に響いて、モデルの彼がこちらに視線を向けた。端正な顔立ちに見つめられ、思わず息を呑む。
次の瞬間、彼は羞恥に顔を歪ませた。予想外の恥じらいに私の方が動揺する。周りのカメラマンも彼の表情に何事かとこちらを向いた。安倍川さんも、私の存在に気づいた。
「ちょっ……」
叱責の声が飛ぶ前に身を翻し、私はそのままスタジオを飛び出した。
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