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東京、新宿、金曜日の23時。 駅から徒歩7分の小洒落たアパートの3階。 慣れたように合鍵をさして重たいドアを開ける。初めてこの鍵を使った日のときめきはとうの昔に置いてきた。 ヒールを脱いでカチカチに凝った肩をまわしながら、リビングへと繋がるドアに手をかける。 当然のように真っ暗な部屋はがらんとしていて、冷たいフローリングから体が冷えてゆく。騒がしいのは嫌いだけど、静寂も苦手ですぐにテレビをつけると、ガヤガヤと笑い声が響いた。 ふう、と溜息をついてバッグを置き、マフラーとコートをソファーにかけて寝室に向かう。 クローゼットの中にある引き出しを開け、シャツを脱いで楽なパーカーに着替えた。 私の家じゃないけど何がどこにあるのかは彼よりも知っているかもしれない。 それは彼が掃除をしないから悪いのであって、偶然見つけてしまったお宝や元カノとの品々などを巡って喧嘩したこともある。まだ付き合いたての頃の可愛らしい思い出だ。     
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