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髪を結いながらキッチンに入って冷蔵庫を開けてみると、私が先週買ってきた食材が綺麗な状態で残っていた。
きっと毎日コンビニのお弁当で済ませてるのだろう。
栄養のあるものを作ってあげたいところだけど、私も疲れている。うーんと唸って、簡単な炒飯を作ることにした。
ちょうどフライパンで炒めていると、玄関の方からカチャリと音がして、この家の主人が帰ってきた。
「おかえり。」
「ただいま。」
「…やつれてるね。」
「年末だから。」
力なくふにゃりと笑って、ネクタイを緩めながら寝室に消えていった彼は、私と同じようにパーカーとスウェットに着替えて戻ってきた。
「先にシャワー浴びてきたら?」
「ううん、リサのご飯食べたい。」
「じゃあお皿とって。」
「これでいい?」
「うん。ありがと。」
まるで夫婦のような会話だけど、結婚はしていない。
大学4年の時に付き合い始めて、今年で6年目。
私はもうずっと前からこの人と一緒になると心に決めているけど、彼はまだ迷っているのかなんなのか、私の欲しい言葉をくれない。
時々結婚をほのめかしてみても、曖昧に話を逸らされる。
28にもなると、周りが結婚して子供を授かっているのを見届けるたびに、私達が一緒にいる意味は何なんだろうと考えてしまう。
しかし何度も言うと重いと思われそうで、もどかしいのが現実。
彼は優しい。今だってものすごく疲れているはずなのに、有り合わせで適当に作った炒飯をおいしいと言ってくれる。
休みの日にはデートもするし、お互いの両親とも顔見知りだ。
心も体も申し分ないほど相性がいいのに、結婚の二文字だけは私達から遠ざかってゆく。
「今日泊まってくでしょ?」
「うん。そのつもりだけど。」
「じゃあ明日は出掛けようか。」
「そうだね。」
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