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やっと聞けたその言葉に、さっきとは違う涙で視界が滲んで、心に温かいものが広がってゆく。
何度も頷いて、彼に抱きついた。
「ちゃんと指輪も用意して、眺めの良いレストランでかっこよく言うつもりだったんだけどな。」
2人とも裸でベッドの上でなんて、とボソボソ話す彼に小さく笑う。
「じゃあ、明日もう一回言って?」
「やだよ。こういうのは一回で十分。」
脱力した彼がベッドに倒れこんだので、私も横になって目の前にある頬を撫でる。
愛おしいその人も同じように私の頬に触れた。
幸せで、暖かくて、頭がぼーっとする。
「別れるって言われたらもう立ち直れないなと思って言えなかった。」
「6年も一緒にいるのに?」
「だって、ベトナムだし。」
「ベトナムかー。ご飯美味しいよね。」
「俺パクチーだめなんだよな。やっていけるかな。」
「すぐ慣れるよ。」
一言二言お喋りしたり、お互いに触れてキスしたり。
そして、反応せずにはいられない、太もものあたりに時々当たるモノ。
「…ねえ、続き。」
「コレは?」
「つけなくていい。」
この人となら世界中どこへ行ったって、やっていけると思っている。
彼から与えられる愛を受け止めながら、近い将来を想像してみた。
喧嘩した日にはパクチーたっぷりの炒飯を作ってやろう、そう心に決めて。
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