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実際、たまに囲っている部屋に顔を出してというだけだったと聞いていたし、まあそうだろうなと思っていた。
それが、ある日を境に少年のマンションで竜崎は暮らす様になった。
何があったかは知らないし、知るつもりもない。まだ、馬に蹴られたくはないのだ。
部下が少年の為に渡した金を着服していることが分かったり、頭痛の種もあったがそれは些末なことだった。
◆
しばらく忙しい日が続いて、竜崎はあの少年のいる家に帰れない日が続いていた。
ようやく粗方カタがついて数日の休みを竜崎がとれることになった。
運転手が運転する車が竜崎の家に向かっていいる。
「止めろ。」
竜崎が車を止めたのは、いかにも女性向けという感じの店が並ぶ一角だった。
ケーキ屋に花屋。ヤクザ家業の人間には似合わないことこの上ない。
あの冷血漢が久しぶりに会う恋人に花だの菓子だの買う姿は、滑稽だった。
だけど、そちらの方が信頼できるとも思う。
「どっちが喜ぶと思うか?」
主語が無いが、青という名の少年の事だという事は分かりきっている。
この男がそれ以外の人間の為にこんなことをするはずが無い。
「寿司でも買って帰ったほうが喜ぶんじゃないですか?」
純粋な物という意味では、そうだろう。
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