第5話 戦闘開始!

3/12
前へ
/92ページ
次へ
 青い空の下で、天童さんの心だけが曇る中、特殊車両の上でうつ伏せになり、精神を集中しているかのように微動だにせず、霊ちゃんはスコープを覗き見ていた。それを上から観客のように声援を言う生徒たちが、霊ちゃんと私の名前を口にしながら騒いでいた。私達って意外と有名人なのかな、そんな事を職務を終えたかのように目を細めながら、疲れきった表情で、部下たちの勇士を眺めていた天童さんの横で、ボソッと口にした私だった。  張り詰める空気に身を置いていた警察官たちは霊ちゃんの名前を耳にし、少し驚いた様子で、一人の警察官が、発砲が来るぞと言う。後の三人も、その一言にあわせるように、四角形の陣の中央にいる熊の警戒を少しでも解こうと、熊を正面にしたまま、スタンロッドを脇に引きながら動きを乱すことなく、少しづつ後退していった。  しかし熊は、窓際にいた一人の警察官にだけ、二足歩行から前のめりになる様に、怒声のような唸り声を上げ、四足歩行になり、窓際にいる警察官に突進していく。熊が突進すると同時に、あれだけ落ち込んでいた天童さんが、驚きの表情で、片手を伸ばしながら持っていたマニュアルを投げ捨て、泣き叫ぶように、熊に突っ込んでいく。私は目をこらしながら熊を目で追った。熊の巨体に隠れてた木島君が少し視界に入り、周囲も困惑の声で叫んでいた。 恵「霊ちゃーん!」ーーーパパンッ(発砲音)  私は助けを求めるよう咄嗟に、霊ちゃんの名前を叫んだ。直後、周囲の声をかき消すように、発砲音が、何故か二発同時に鳴り響いた。  どさっ(警察官が倒れる音) ズダンッ(熊が倒れる音)  
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加