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一瞬だった。発砲音が鳴り響いた直後、周囲の声が、風の吹く音だけに変わるほど、静まり返り、窓際にいる熊が、一人の警察官を、隠すように倒れ、その警察官の安否を、その場で衝撃を受け、硬直し、凝視する事しかできない私は、確認できずにいた。
そんな状況の中、天童さんだけが、熊に覆い隠されている警察官の名前を必死に叫びながら近づいていた。
天童「おいっ、しっかりしろ、お前たち手を貸せ!」
今にでも泣きそうな表情で、熊の下敷きになっていると思われる、一人の部下を助けようと、腰を落とし、力強く押しながら、三人の部下に助けを求めていた。
警察官「はっ、はいっ!」
口を開きながら、青ざめた表情で立ちつくしていた警察官達が、天童さんの険しい表情で助けを求める声に、生気を取り戻したかのように駆けつけて行った。いつの間にか周囲からは、安否を気にかける声が聞こえてきた。私はその声を無意識に聴き、徐々に冷静さを取り戻していく。そうしている内に、木島君の姿が目にボンヤリと映っていくと、声が聞こえた。
木島「しっかりしろ園崎!」
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