題6話 予兆

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題6話 予兆

 とある研究施設、切れかける蛍光灯で照らされた不気味な廊下を歩く一人の男、長い髪を一本に束ねたオールバック、一重の目に伊達メガネをかけてる男の止った先には自動ドアがあり右側のカードリーダーにIDカードを通し、風を切るような音で開いた扉に男が入る。肌寒い無音の中、黒一色の部屋に足音だけが聞こえた。自動点灯で一斉に照らされた部屋には、強化ガラスで出来た筒状の容器に薄いグレー色の液体が1000ℓ入れられており、その容器に40㎝の耐薬品性のパイプゴムが部屋から外に繋げられ、特大容器の前にデスクトップが置かれていた。  男はパソコンに近づき、無言で起動させた。睨みつけながら10秒ほどで待ち立ち上がった画面に、前かがみになり、濃度と書かれたオリジナルのアイコンをクリックした。・・・また濃くなったか。男はボソッと呟き、姿勢を伸ばしグレー色の液体を不安な表情で見つめながら、軽く深呼吸をした。 関内「やはり原因は彼女か。」    意味深なセリフをパソコンに吐き捨てる様に言うと、関内は着ている白いコートのポケットからUSBを取り出しパソコンに接続した。立ったままUSBの悪魔の終焉と書かれたフォルダをクリックした。 関内「聖なる息吹を浴びた悪魔は苦しみ、もがく事なく内なる憎を霧に変え、さ迷う霧は地にいる物に寄生し、一つの個体になる時こそ、その者は平和への懸け橋となる。」  関内は頬に皺を寄せ不気味な笑みで詩人のように語った。 関内「この文面通りに起こしてきた私たちの研究が、願望がようやく成就される。・・・フフフ、君には死んでもらう、主と共に、我々が作る理想郷の為に!」  ズレかけた眼鏡を中指で軽く押し戻し不敵な笑みのまま、部屋で起動されてるすべての機器をそのままに、両手をポケットに入れ白い歯を見せつける気味の悪い笑みで研究所を後にした。  
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