題6話 予兆

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 私達は、下校時間、昨日の一件での、反省文を、2階の小汚い空き教室で、机を一列に3台並べ、左の窓際から、霊ちゃん、恵、木島、の順で書かされていた。   恵「何で私ってこうなんだろうね?」  私は、机に上体を俯きで伏せながら、不満を吐いた。 霊「フフッ、御免なさい。まさか、朝の無理ゲーを、本気でとらえるなんて思わ無かったのよ。」 木島「今の反省文と関係ない事で、落ち込んでんじゃねーよ。」  あざ笑う霊ちゃんと、野次を飛ばす木島君の間にいる私は、さらに気が重くなっていく。  霊「ようやく、出来たわ。」  霊ちゃんは、両腕を、大きく伸ばしながら、力の抜けきるように呟く。 恵「霊ちゃんも出来たの?」 木島「今、もっ、て言ったか。・・・お前の見せてくんない?」  私も書き終えたという、ニュアンスに、いち早く驚く木島君は、片手を私の机の前で広げてきた。 恵「いいけどさ、何で、私だけ疑うの?」  眉間に皺を寄せながら、木島君の手に用紙を、軽く叩きつけるように渡す。 木島「・・・(これからは、皆様方に出来るだけ迷惑をかけないよう、誠心誠意、出来るだけ努力していきたいと思います。)・・・何だこれ?」 霊「フフフッ、まるで謝罪会見の場で小学生が謝罪してるみたいね。アハハハハッ」 用紙を片手に、怪しげに読み上げた木島君に、お腹を抱えて爆笑する霊ちゃん。私はちょっとした自己嫌悪を感じながら、ふてくされた表情で、何も書かれていない、黒板を睨みつけていた。  コツッコツッコツッ(廊下を歩く音) アホな空気が充満する、この教室に、一人のマッドサイエンティストが来ることを、この時の私たちは、まだ知らずにいた。    第六話 完  
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