43人が本棚に入れています
本棚に追加
なんなの、これぇ!
クスクスと笑いながら、思わず真友子は胸の内で小さく叫んだ。
やっぱり彼って、癒し系だわ。ホントに、すごく和む。
実際、電話を通した会話だけだった頃は、なんとなく彼の声が耳に心地良いに過ぎなかった。
しかし当人ときちんと出会って以降は、偶然がもたらしたタイミングとは
いえ、何かと彼に心が救われたのも事実。
だから今までは、漠然と彼の「癒し系」というキャラクターが真友子の
気持ちを救ってくれたのかと思っていた。
それが今、目の前でちょっととぼけたボケ方をして、少し照れ臭そうに
自分のエピソードを口にする彼の存在そのものが、この一年に有った辛い事も苦い思いも何もかもを忘れて、和ませてくれるように感じる。
だからだろう、またしてもそれは素直に真友子の言葉になった。
「笠原さんって、不思議な方ですよね」
「えっ? 不思議、ですか?」
だが、もちろん目の前の笠原はキョトンとする。
そしてその姿がまたなんとも無邪気で、更に真友子を素直にさせ、
「実は……」と数か月前にクリーニング店の前で見かけた話を口にした。
最初のコメントを投稿しよう!