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しかしそれを聞いた笠原は、当然ながら、決まり悪そうに眉尻を下げた。
「あぁ、もう。
なんで沢田さんには、こう変な所ばかりさらけ出してるんだか……」
だが、少しションボリ苦笑する笠原に、真友子は微笑んでかぶりを振った。
「実はあの頃、私、仕事で大失敗してすごく落ち込んでたんです。
しかもそれの後処理もたんまり残ってたので、もう毎日が辛くて辛くて。
そんなタイミングであの時の笠原さんを目にしたら、胸やお腹に重たく沈んでいた何かが、なぜかスゥーッと消えていく気がして……」
すごく助けられました。
あの時を思い返して、真友子はしみじみと言う。
そんな笠原との忘年会では、美味しい摘まみや鍋を間に話が弾み、
楽しい時間に当然のように酒もいささか進んだ。
そんな酒の力も借りてだが、店を出る頃には「大ちゃん」「まぁゆ」と
互いを呼び合い、いつしか敬語も消えている。
そして、いつの間にか気楽な距離になったからだろうか。
並んでブラブラと歩く帰り道で、思わずポロリと真友子の本音が口を突いた。
「あぁ、大ちゃんと毎日一緒にいたら楽しいだろうなぁ」
だが、これぞまさに彼女たちの大展開の始まりだった。
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