9 大混乱の末路

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だが、ゆっくりと顔を上げながらぼんやり思ったと同時に、もう一人の自分が彼の思考を平手で叩く。 バカ、酒と話の勢いがさせた言葉の綾だ。真に受けるな。 そして、どうせ明日の朝には、そんな事を言ったことすら彼女の記憶からは きれいさっぱり消えているさと立ち上がり、大祐はコートを淡々と脱ぐ。 だが、不意に温もりから離れて冷えた部屋の温度に晒され、何かが目覚める ように再び大祐は動きを止めた。 けどもし……、もしも万々が一、彼女が本気だったとしたら……。 しかし今度は、声に出して彼は自分をなじった。 「アホかっ!」 冷静に考えてもみろ。 多少の距離は縮まっても、まだ友達未満に変わりはない。 そんな男女がいきなり一緒に住みたいなど、どう考えても非現実的。 有り得るわけなどないだろう。 しかし、そう淡々と呟く自分に、もう一人の自分が「でも」と言う。
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