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11 まさかの先は猿
「まさか」とは、当然、気付かぬ恋心に限ったことではない。
それどころか、思えば、日本中のどこかで誰かが「まさか」という事に
出くわしているものかもしれない。
ただ普通に考えれば、その「まさか」が自分に降りかかると思っている人間は少ないだろう。
もちろんこの時の大祐も、よもや、その「まさか」に自分が巻き込まれるなど毛ほども思ってはいなかった。
初めてのデートは、何をするでもなくのんびりと散歩をしながら会話を
楽しみ、夕食は駅前で中華料理。
その後は、分別ある大人の初デートとして、彼らはすんなり帰路についた。
ところが、互いの住まいへの分かれ道となる分岐点が近付いてくると、
なんだか辺りが妙に物々しい。
野次馬の数こそ溢れるほどではないが、少し先では赤々と住宅街を染める
赤色灯が回り、何台ものパトカーが大祐の帰り道の方に停車している。
「何か有ったのかしら」
いよいよ交差点に差し掛かりつつ、歩調を緩めた真友子が怪訝そうに呟く。
「火事とかかなぁ」
だが、のんびりと言った大祐に、見知らぬ初老の女性が答えてくれた。
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