第2章 手を伸ばせば。

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朝から強い日差しが照りつけてる。 そんな夏休みの始まりに、手が痛くなるほど冷たいおしぼりを絞る…。 今日から一泊で、剣道教室の夏合宿。毎年利用させていただいている体育館つきの民宿。 裏方で参加の私は、もうすぐ休憩になる みんなの おしぼりを用意。他のお母さん達も 忙しそうに立ち働いている。 この暑さの中、みんな頑張ってるな~。 今年は、ちょっと瞳子ちゃんこと 仁科瞳子ちゃんが参加してくれていて、今年入ったばかりの新人さんの稽古をしてくれている。 お姉さん先生の登場に、子供達は大盛り上がりで、いつもより大きな声で頑張ってる。 休憩時間になり、大人も子供も汗だくだ。 みんなに冷やしおしぼりを渡して回る。 「瞳子ちゃん、後で試合やろうよ!」 「瞳子ちゃん、高校生なんだって?」 「瞳子ちゃん、彼氏いるの?」 …子供達だけではなく、卒業生のお兄さん達やおじさん達も 大盛り上がり…。 瞳子ちゃんは、ニコニコしながら オッさん達(失礼)をあしらいつつ おしぼりで顔を拭いている。 「瞳子ちゃんは、悠斗兄ちゃんの彼女だよね~!」 オマセな9歳女子の爆弾発言が炸裂。 「そうだよね~。」 「さっき、瞳子って呼んでるの見た!」 「瞳子ちゃんと悠斗兄ちゃん、何度も2人で目を合わせて、ニコってしてるもん!」 小学生と言えども女子は女子。油断大敵。 「え~っ!?そうなの?」と騒つく少年達。 「え~っ!?そうなの?」と騒つく大人達。 その時…。 「こんにちは~」という声にみんなが振り向くと、ポロシャツ姿の高宮学園校長と剣道着の理事長が立っていた。 「先日の稽古会で、高宮先生に合宿に誘っていただいたそうで、行くと言って聞かないものですから…ご迷惑ではないではないですか?」 「とんでもない!高宮先生に来ていただけたら、大人も子供も良い稽古になります。」 小さい老人の登場に 子供達は興味津々。 高宮理事長の強さを知る大人達は、戦々恐々。 理事長先生は、私を見つけると 近づいてきて 「凪ちゃん、久しぶりだね~!卒業以来、前はよくおしゃべりしたのに、会えなくて寂しいから、一瀬君に無理言って来ちゃったよ!」 「懐かしいです!よく数学準備室で おしゃべりしましたよね~。懐かしい!」 みんなが驚いて固まる中、私達は久しぶりの再会を喜びあった。
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