第7章優しく口付けて

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アメニティのシャンプーを泡立てると 爽やかな花の香りがして 本っ当に和む〜。 幸せ〜。 深呼吸して いい香りを目一杯吸い込んだ。 何だか、肌がすべすべしてきそうだ。 吸い込みながら、不意に現実に引き戻される。 っていうか、もしかして…功輔さん 待ってる? っていうか、もしかして…肝心の夜に 1人でグースカ寝ちゃって、呆れてる? これは…マズいっ! 急がないとっ!! 息を吐き切る頃には、さっきまでのラグジュアリーな気分は 吹き飛んで 髪も身体もガシガシ、ゴシゴシ洗うと 慌てて バスルームを出た。 小洒落た下着をつけて、お気に入りの部屋着を着て…。 髪をタオルで拭く。 乾かしてる暇は…ないねっ! さて…。 こっから、どんな顔して出ていけばいいのか…。 アレコレ考えたけど、結局荷物を抱えて そーっと バスルームを出た。 ずーっとここにいるわけにいかないしね。 「あ、出た? 早いね せっかくだから もっと満喫してくればよかったのに。」 「…でも。」 ベッドから降りた功輔さんの手が頭にのびる。 「って、髪まだ濡れてるよ。」 「モタモタしてちゃダメだと思って…。」 「これじゃ、風邪ひく。こっちに座りな。」 鏡の前のオシャレな椅子に座ると 功輔さんがバスルームからドライヤーを持って スイッチを入れた。 時折 ワシワシッと髪をほぐされて 功輔さんの長い指が 私の髪を梳くのを眺めていた。 気持ちいい…し…なんだか…こういうの…。 エロい…。 って何考えてんのよっ! 私! 頭の中の妄想が膨らみ過ぎて耳から出そう…。 それか、溶けた脳味噌。 そんな事を考えてると ドライヤーの音が止んだ。 そっと梳いた髪を耳にかけて 功輔さんが顔を寄せる。 「凪が、ロボットみたいにコチコチになったり、百面相になってるから言うけど…」 ん? 「一緒に過ごす夜に必ずエッチしなくても、いいんだよ。」 「えっ?!」 「わっ!! 急に振り向くなよ。ぶつかる。」 オデコにドライヤーがぶつかるとこだった。 「でもっ! そうなの?」 「まぁ…いつもしてもいいし…する人もいるとは思うけど。」 「そうなんだ…。」 「いつもしたい派?」 なっ!なんて事聞くんだ!! 首をブンブンふる。 「…したくないのか…。悲しい…。」 「違っ!えっと…あの…」 先生はちょっと笑うと、アワアワ 慌ててしどろもどろになってるわたしの頭を正面に向けると 鏡の中の私に言った。 「嘘だよ。ちょっとからかった。今度また2人で出かけるのもいいし、俺のウチに泊まりにきてもいいし。」 お泊りデート! 「さ、もうちょっとだから、前向いてて」 ドライヤーが再開。 乾いた髪は自分の髪とは思えないほど サラッサラで ツヤッツヤになった。 高級シャンプーと功輔さんのおかげだ。
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