第2章 手を伸ばせば。

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「一瀬さん!ご一緒してもいいですか?」 食堂で昼を食べていると、後輩の小谷が声をかけてきた。 「ああ、いいよ。」 小谷は俺の4年後輩で、その昔 俺の部下と結婚した。小谷にせがまれて、何度も彼女を誘った飲み会をやったっけ。今では3人の子どもも出来て、幸せ一家のはずだ。 「ずいぶん久しぶりじゃないか。忙しいのか?」 「まぁ、仕事の方は 相変わらずなんですけど。ちょっと気になる事があって」 「どした?珍しいな」 「一瀬さんとこの娘さん、高宮学園ですよね?」 「うん。まあ、この春に卒業したけどね。」 「もう卒業ですか?」 「高宮学園が何かあるの?」 「実は…勘違いかもしれないんですが、先日 ウチの嫁が友達とカラオケに行った時に、高宮学園の制服を着た子を見かけたらしいんです。 それが、父親ぐらいの歳の男と一緒だったって。もちろん家族の雰囲気ではなくて。」 「見間違いかもしれないんですが、高宮学園の制服は、ブラウスに大きな白いリボンがあって、特徴的なので。」 「勘違いにしても、気になるな」 「剣道の稽古会に行けば、高宮先生にお会い出来る事は分かってるんですが、不確かな情報なので いきなり理事長に知らせるのも…と思ったり、稽古会も すっかりご無沙汰なので、敷居が高いのもありまして。」 「そうだな。とりあえず、あてはあるから。」 「あて…ですか?」 「高宮学園の教師。娘の彼氏だ」 「…?!」
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