第2章 手を伸ばせば。

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図書館の仕事は 好きだ。 この紙の匂いとか。仕事内容も。人間関係も…いい感じ。 金曜日は特に。 彼女がいるから。 一瀬凪。 「夏の図書館の展示、評判良かったですね~。最近、妖怪流行ってるし。」 「学校見学に来るのは、ほとんど小学生だからね」 「吉村さん、あんなポップなイラストとか描くんですね。ちょっと意外。」 「でも、夏が終わるから 次を考えないと」 「私、次は グリムとか、アンデルセンみたいな童話の世界はどうかなって思ってるんですけど。それか、ハリーポッターの世界とか」 「凪さん、ハリーポッター好きなんだ。」 「好き!今からでも、ホグワーツの入学許可証が届いたら、行きます!」 「…あれは、小学生一年生ぐらいにくるんじゃないの?」 「気持ちはって事ですよ。っていうか、吉村さんも好きなんですか?ハリーポッター!」 「好きだよ。あの世界観。高校の卒業旅行でUSJも行ったよ」 「いいなぁUSJ!」 「彼氏と行けば?一泊でも遊べるよ」 「…お泊りは…ちょっと。」 「ふーん…ちょっと立ち入った事聞いていい?」 「ん?」 「前、付き合ってたら、するとか、しないとか…言ってたけど、そんな関係でお泊りNG?」 「前の話にはカタがついたんです。いいんですよ!もう、私の事は。本当に立ち入った事聞きますね?」 なんか、気になって。 「ごめん。忘れて。」 「ううん。いいんですけど、元は私が変な事聞いたせいだし。…私も立ち入った事聞いていいですか?」 「いいよ。答えるか分からないけど。」 「吉村さん、好きな人いるんですか?」 凪さん…。君が聞くか。 「いるよ」 「…。」 「黙らないでよ」 「答えないかと思ったから…。どんな人ですか?」 「…春風みたいな人…かな」 「…。」 「だから、黙らないで!」 「だって、ものすごくロマンチックだから。吉村さん…意外。」 春風みたいな人…それが…君だと言ったら、どんな顔するかな。 「お付き合いしてるんですか?」 「立ち入った質問、グイグイ来るな~。…付き合ってはいない。片思い。」 「そうなんだ。」 「…禁断の恋。報われない恋」 「うそ?!人妻?」 「人妻じゃない…でも彼氏持ち」 「そうなんだ…なんだか切ない…。」 「そんな顔するなよ」
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