第3章 伸ばした手が 触れ合った時

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「…それは…つまり…先生のご実家に?」 「そう…ちょっとまずい事になって…でも無理なら、いい。」 「まずい事?」 「いや、こっちの事で…。大丈夫だから、心配しないで」 「…行きます!先生のご実家!」 「…大丈夫?なんか…ゴメンね。急に…。」 「全然、全然、ぜーんぜん大丈夫ですから!!!」 「じゃ、迎えに行く!40分ぐらいかかるから」 「はい、待ってます!お願いします!」 …。 家族全員が聞き耳を立てていたので、すぐ全員が慌てて出した。 「いきなり実家訪問!ハードル高くない?高杉先生。俺もついて行こうか?萌子さんに会いたい!」と言ったのは弟の望。 「心配だから、お父さんも行こうか?」と言ったのは もちろん お父さん。 「とにかく早く支度しなさい!!長野のおばあちゃんが送ってくれたリンゴがあるから、持って行きな! 向こうに行ったら、お行儀よくするのよ?返事はハキハキ!調子に乗らない事! あぁ、もう心配だから ついて行きたい!」 一番頼りになるのは、お母さん。 でも…でもさ、みんなついて行きたいんじゃん! そんなに危なっかしいか?私。 ま、流れで行くって言っちゃったけど、正直ドキドキしてる。 でも楽しみ…でもある。 どうにかこうにか支度が間に合い、玄関を出ると先生の車が停まっていた。 なぜか家族全員が出てきている事に、ちょっとびっくりしてるけど、いつもの先生だ。 まずい事ってなんだったんだろう。 助手席に乗るってシートベルトを締めると、待ちきれず 先生に質問。 「先生、電話で言ってたまずい事ってなんですか?」 「実は…実家にいて ちょっと買い物に行ってる間にスマホの待ち受けを見られて…。」 …ん?…もしや…。 「凪の写真を使ってるもんで…さ…。親が騒ぎ出し、萌子が 俺の彼女が元教え子だって 油注いで、二進も三進もいかなくなりました」 恥ずかしいのか、ものすごい早口で説明してくれた。 「ゴメン。」 「…先生、私の写真なんて 持ってましたっけ?」 「…実は持ってる。一枚。待ち受けにしてる。」 「…。」 「ゴメン。色々。」 いつもは、爽やかなイケメンの先生が ちょっと可愛く見えた。 「いいです!でも後で、その写真見たいです!」 「…分かった。」 もちろん、拒否権はない。
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