第3章 伸ばした手が 触れ合った時

8/30

121人が本棚に入れています
本棚に追加
/341ページ
「疲れたでしょ。ウチの家族 よく喋るからさ」 「大丈夫です!すごく楽しい。家出る時は メチャクチャ緊張してたんですけど。」 先生の部屋は、さっぱり片付いていて あんまりものがない。 「引っ越した時に あらかた片付けちゃって、ここには、時々泊まりに来るぐらいだから」 「先生、アルバムないの?見たいな~」 「言うと思って、探しといたよ。前に一瀬家に行った時に見せてもらたからね。」 先生が赤ちゃんの頃からのアルバムをめくる。 たくさんの写真が丁寧に整理されていて、先生が可愛がられてたのが分かる。 途中から萌子さんが登場! 結構お転婆だったみたい。 「凪…さっきの待ち受けの事なんだけど、あのままでもいい?」 先生が、アルバムに夢中になっていた私の後れ毛を 梳いて耳にかけた。 「ん? でも あれ、小さすぎないですか?」 「俺だけが 凪だって分かってればいから。」 そう言って 先生は私の耳元に顔を寄せると そっと囁いた。 「やっと、2人になれた。」 先…生? 「実家もくつろぐけど、やっぱり凪がいいな…」 先生の息が耳をかすめる。ドキドキして…瞬きも出来ない。 先生は、そんな私の反応を面白がるみたいに 一瞬耳に口づけた。 「ん。やだ…耳…。」 「凪、耳 弱い?」 「…。」 「こっち向いて。」 先生は私の顎をわずかに上げると上唇を軽く啄ばみ、ふわりと笑った。 くはーっ!!!もう!やめて!下には先生の家族がいるのに、キスとか! キスとか! あまりの恥ずかしさに両手で顔を覆った私を そのまま そっと抱きしめた。 「今日は、ありがとう…凪、顔が甘々になってるよ。部屋で何してたか、バレると困る。もうすぐ みんなでルミエールに行くから、ちょっと落ち着こうか。」 「ルミエール…前、誕生日に連れて行ってくれたあのお店?」 抱きしめられたまま、先生の胸の中で答える。 白シャツから柔軟剤の匂いがする。 「そうだよ。 あの店はウチの特別だから。今度、また2人で行こう。」 先生は…私を喜ばせるのが うますぎ。 先生の腕から 抜け出ると 2人で 顔を合わせて笑った。
/341ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加