第3章 伸ばした手が 触れ合った時

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高杉家の皆さんと、ルミエール。 前に 先生と2人で来た時もそうだったけど、扉を開けると、とってもいい匂いがして 急にお腹がすいて来た。 「ここ、本当に美味しいんだよね!」 「ウチは、何かあるとルミエールなの。家族の誕生日とか、功輔が大学に受かった時も来たのよ」 「おばあちゃんは、グラタンだよね?」 「そうそう!ホワイトソースが滑らかで、とっても美味しいの。凪ちゃんも食べてみて!」 「皆さん、今日も仲良いですね~。今日は何の会ですか?」 「兄さんに彼女ができたお祝い。」 「それは…おめでとうございます!」 前に来た事、内緒にしてくれてるんだ。 みんなが席に着き、思い思いの料理を頼む。 私は おばあちゃんおススメのグラタン! 「それにしても、高宮学園の理事長さんが功輔と凪ちゃんの事を応援してくれるのは、分かるような気がするわね。」 「おばあちゃん、高宮理事長知ってるの?」 「こっちは知ってるけど、向こうは知らないってやつよ。高宮兄弟は、その世界では有名人だったから」 高宮理事長、兄弟いるんだ。 「私が大昔に出版社で働いていたのは、知ってるね?戦争が終わってすぐの頃に、高宮兄弟が学校を始めて 教材を集める為にウチの会社にも来たの。」 「その前は、何やってたの?高宮兄弟。」 「高宮家っていうのは、軍人さんの家で高宮兄弟も戦争中は海軍の軍人さんだったのよ。終戦になって2人で学校を立ち上げたの。」 「そうなんだ。」 「戦争が終わってすぐだったから、教材の確保にも苦労してたね~。ウチの会社でも社長が高宮兄弟の『これからは人を育てる仕事をしたい』っていう心意気を気に入って、格安で提供してたの。」 「理事長に、そんなドラマがあったとはね」 「ドラマは、それだけじゃないのよ。高宮学園が始まって何年かした頃に高宮兄弟の弟、功輔のとこの理事長先生が、結婚したんだけどね。その相手が学校の事務をしながら勉強していた女性だったの。」 え? 「…教え子?」 「奥さんになった人は、もう大人だったけど やっかみもあって、随分バッシングを受けてね。何年かは学校も大変だったみたいなのよ」 「だから、功輔と凪ちゃんの事を応援してくれるのかな」 理事長先生、それに先生のおばあちゃん…。 人に歴史ありって本当だな。
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