第3章 伸ばした手が 触れ合った時

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「それで?」 「2人が、バイト先の図書館から出てきたとこに 出くわして、なんだかイライラして 凪に八つ当たりした。」 「功輔が ヤキモチ?」 「…。」 「それで?」 「たぶん凪は、なんで俺の機嫌が悪いのかさっぱり分からなかったと思うんだけど、友達に相談したみたいで、次の日 ウチに謝りにきてさ。『嫌な思いさせて、ごめんなさい』って」 「俺は俺で、すっかり自信無くなってて。同世代の男と付き合った方が凪は幸せなんじゃないか、とか思って。そのバイトの先輩ってのが 凪が昔好きだった奴に似ててさ…。」 「それで?」 「俺の方から、凪の手を離せなそうだから 俺の他に好きな奴が出来たら、凪から手を離せって言ったんだけど。」 「だけど?」 「凪、大泣きして大怒りした。俺が シワッシワのおじいさんになっても、絶対手を離さない!って言われた」 「シワッシワ…お前と同じ歳のせいか、なぜか俺までダメージ受ける」 「まぁね。でも そんな風に 真っ直ぐ気持ちを向けられたら、こっちも覚悟しないとって思って。俺は、もう凪がいない人生なんて考えられないから」 「なんだか…凄いな。お前にそこまで言わせるなんてさ。功輔変わったな、本当。幸せなんだな。 今度 ぜひ会いたいね、凪ちゃんに。」 「うん、一点の曇りもなく幸せだよ」 そう言いながら、俺は凪の顔を思い浮かべていた。 その後、俺たちはビールや酎ハイを飲みながら、それぞれの仕事の話や昔話に 花を咲かせた。 自称 恋多き男、弓原の新しい彼女の話を聞いたり、俺の方は、入試係の苦労を語り 援助交際問題の話をしたり…。 「数万円の金で見ず知らずの男に抱かれる女の子は、自分を大事にする事を忘れちゃってるのかな。自分に数万円の価値しかないと思ってるなんて…心が痛むな」 弓原の言葉が心に響いた。
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