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日々、国から追放され続ける罪人達。その烙印へと石を投げる行為は善良な民の権利であり、いつしか儀式と化していた。
そして愚かなことに、癒し手の救いを受けようとする追放された罪人もまた、数え切れないほど現れた。
今日もまた、真夜中に神殿に忍び込み、癒し手に直接会おうとした罪人の男が一人、最期の時を迎えようとしていた。
「どうか慈悲を」
癒し手の信徒達に捕らえられた男は、涙ながらに訴えた。
男は見るからにみすぼらしく、痩せこけ、全身に傷を負っていた。顔色も土気色であり、何らかの病を患っているのは明らかだった。
「二度と罪は犯しません。どうかもう一度この国に住まわせてください」
外の世界においてこの国は、曰く神が住む国であると伝えられていた。この国に住むことが叶うのは、神の恩寵を賜ることに等しいのだと。
それ故に、この国に生まれながら罪を犯す者は、その大きさに問わず神を畏れぬ罪人とみなされた。
そのような意味の烙印を持つ者を迎え入れる国は少なく、あったとしても罪人への待遇は迫害に等しいものとなる。
だからこそ、罪人達がたどる道は二つに一つ。そのまま野垂れ死ぬか、一縷の望みを求て国に戻るしかないのだった。
「わかりました。癒し手様にお伺いしましょう」
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