白の殉教

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 身を震わせながら伏して懇願する男を、信徒達は神殿の奥深くへと連行した。  静謐な空気に満ちた謁見の大広間。その更に奥の座に、白き癒し手の姿が見える。  その清冽な白さに己の罪を暴かれているような気がして、男は畏れ平伏する。すると、癒し手の傍らに控える年老いた神官が厳かに口を開いた。 「あなたは罪を悔いているのですか?」 「はい」 「ならば、贖罪のために生涯を人々のために尽くせますか?」 「私の全てをこの国に捧げると誓います」  その言葉は男の本心から出たものに違いなかった。その切々たる願いを受けて、神官は首肯した。 「よろしい。それでは、あなたがどれほど改心したか、試させてもらいます」  キン、と金属が擦れる音が男を凍り付かせる。神官は腰にはいた長剣を鞘から抜き放ち、男に歩み寄ろうとしていた。 「何をするのですか!?」  気づけば男は信徒達に四肢を押さえられ、身動きがとれずにいた。助けを請う男の叫びだけが、広間に虚しく響き渡る。 「耐えてみなさい。大丈夫です。全ては癒し手様の御力で治ります」  まず、神官は男の両足の腱を断ち歩けなくした。次に喉を裂いて言葉を封じ、更に両目を突くことで光を奪った。     
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加