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男は我が身に宿る清廉な力を感じる。血液のように全身を循環してするそれは、癒し手に触れたときに感じた力そのものだった。
「理解したようですね」
こわばる男の手を握った神官が、満足げに深く頷く。
「この国で罪人が暮らす方法はただ一つ。それは新たな癒し手となり、生涯人々に奉仕することです」
癒し手の死の間際に、その力は継承される。自由をなくした身体で、男は神官から語られる秘密を聞くしかなかった。
「何故このような御力を神が授けられたのか、真実はわかりません。しかし我々は考えました。おそらくこの御力は、罪の汚れを取り除くためにあるのだと。あなたのように罪を悔い、赦しを請う者へ神が与える唯一の道なのです。その命が尽きるまで人々を救うことが、今日からあなたに課せられた義務です」
身に宿したことで、男は癒しの力の本質を理解した。傷や病を癒すためには、相応の代償が必要となる。
それは即ち、命に他ならない。癒し手は救いを求める者の傷、病魔を吸い上げ、己の命をもって浄化しているのだ。
男で癒し手が何代目になるのか、既に数えられてはいない。それほどまでに、救いを求めるものは多く、罪を犯す者もまた多かった。
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